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2011/02/19

書評『もののけ本所深川事件帖 オサキ鰻大食い合戦へ』だぞ

「王子稲荷には、おこんと呼ばれる狐の親分が棲んでいて、江戸の外から魔物が入って来ないように、江戸の町を守っているんだよ」先代の番頭

『もののけ本所深川事件帖 オサキ鰻大食い合戦へ』高橋由太(宝島社 宝島社文庫2010年20月21日発行 476円+税)

 オサキというのは「尾裂狐」などと書く、オサキ狐、クダ狐、イヅナ等と呼ばれるが、呼称が違うだけで同じであるという説や、似て非なる物とする説等がある。日本古来の民間信仰にに根付いた、多くは小ネズミ程の小さな子狐の姿をした妖怪で、いわゆる使い魔のように使いこなす術者が居たり、憑かれて滅んだ家があったりと、逸話も色々だ。
 周吉は、オサキ持ちであるが故に故郷を追われ、一度は人界を離れて山野に暮らしていた男。5年程前に江戸本所深川の献残屋『鵙屋(もずや)』の主人安左衛門を助けたことから、店の手伝いをすることになり、今はこの店で手代をしている。献残屋というのは中元・歳暮の贈り物を安く買って転売する商売で、贈り物と頼み事が人事異動に欠かせなかった江戸の武家社会に必須の仕事だ。幕府や各藩の重職にある大身の武家にはそれこそ山のように贈答品が集まり、死蔵したり腐らせたりするよりは安価でも金に換えられるならばその家にとっても有り難い。また中古とはいえ一流の店で仕立てられ「何卒要職に就けますように」と贈った贈答品は、献残屋を通じて手元不如意な下級武士が家中からかき集めた小金で買って「微禄なりとも今よりは恵まれた職に」と頼み事をするためにリサイクルされてゆく。
 しかし、この鵙屋は、それだけを商売にしているのではない。武家社会が困窮してきた江戸期、体面を保つため祖先伝来の品を売り払う家も多かった。裕福な大身武家に伺った献残屋の顔で武家屋敷を訪ねて、こっそりそう言った古道具を引き取るのも、このお店の大きな商売だった。しかし、こうした伝来の古道具の中には、年を経て妖と化した付喪神が混じっていることも多い。さすがにこういう物は売れないから、鵙屋にはいつのまにか、こう言う物をまとめて置いておくための部屋が出来ていた。
 オサキ持ちの周吉はこの店中みんなが気味悪がる“もののけ部屋”に住んでいる。周吉にとってはこんな付喪神は全く恐ろしくもなんともないからだ。
 さて、1巻目『……オサキ江戸へ』で、かどわかされたお琴お嬢さんを助け、相思相愛フラグも立ち、婿養子も目前と思われた周吉だが、生来の朴念仁が災いしたか、お嬢さんも旦那もおかみさんもみんなそのつもりなのに周吉本人だけその気になっておらず、相変わらず“もののけ部屋”住まいの手代のままだった。
 今回はこの手代さんが、うっかり出来てしまったお店の帳簿の穴を埋めるため、百両の賞金が出る本所深川の大食い合戦に出ることになった。しかし、そこに深川の鰻屋を巡る陰謀が絡み、深川にある朱引き稲荷のベニ様と言う大狐が関係しているかもと言う連続放火が絡み、周吉と仲の良い謎の老剣士、新陰流免許皆伝の柳生蜘蛛ノ介が絡み、正邪善悪入り乱れての大食い合戦と相成った。はたして百両の行方は如何に!?

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コメント

もう読みました、ありがとう

投稿: 武装錬金同人誌 | 2011/03/30 15:20

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