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2011/08/05

今度は侵略戦争だぞ!

(はい、地球は狙われています。私は彼らチルゾギーニャ遊星人の侵略を阻止するために地球に来たんです)ジェミー

『MM9―invasion― 』山本 弘( 東京創元社1700円+税)

 前巻ラストの、巨大少女怪獣ヒメと、神話伝承から推定される以外では初めて観測されたMM9規模の巨大怪獣クトウリュウとの戦いから5年の歳月が流れていた。ヒメは人間サイズに戻った後、以前同様筑波の気象研で暮らし始めた。
 しかし既にヒメは20メートル級まで巨大化することが判明している。この身長20メートルの巨人型といえば、想定体重100トンを越え、MM5クラスである。法規では、普通に歩き回るだけで都市に被害を与え得るこのクラス以上の怪獣は、発見次第即刻排除することになっている。しかし、ヒメは会話こそ出来ないが、人間の幼児程度の知能を持ち、かつ人に懐いており、さらにクトウリュウ撃退の立役者でもある。世論、専門家の意見、国会の論調、すべてが二分されたまま平行線を辿ったが、戦いから3ヶ月ほど後にヒメは全身を分泌年液で覆い、ミイラのような姿で仮死冬眠クリプトビオシスに入ってしまった。そして次にクトウリュウ級の神話怪獣が人類に害を及ぼす何百年か先まで眠り続けるのではないかと推測されたまま、現在に至る。「今のところ害は無い」という判断が大勢を占め、ニスを塗った木彫か蝉の抜け殻のようになって固まったまま、ヒメは気象研に保護されていた。このヒメの観察・研究のためもあり、案野悠里(あんのゆり)は気特対から気象研に移動していた。
 しかし、いかに研究が行き詰まっているとしても、かつてヒメを攫ったCCIのようなカルト・テロ集団がヒメを狙うことは今後も考えられる。ヒメは、より安全で、万が一突然目覚めても周囲に被害を及ぼす心配の少ない、北海道の自衛隊基地へ遷されることになった。
 しかし、そのヒメを載せたヘリが気象研から大型機に積み替える中継基地の百里に向かう途中、霞ヶ浦上空で隕石と衝突して消息を絶った。しかも、目撃者によるとそれは宇宙から落下して来た隕石とは思えぬ低速でヘリと衝突している。
 気象庁特異生物対策部部長、久里浜 祥一の脳裏を「宇宙怪獣」という不吉な語がよぎった

 待望のMM9(エムエムナイン)第2部が、東京創元社から登場。今度は宇宙からの侵略である。

 地震・津波・台風などという自然現象と同様に、巨大な怪獣が出現する世界を舞台に、発生した怪獣災害情報の所轄チームである「気象庁特異生物対策部」、略して「気特対」の活躍を描く怪獣小説が帰って来た。「気特対」はもちろん『ウルトラマン』の科学特捜隊(科特隊)への愛溢れるもじりだが、科学特捜隊のような「怪獣退治の専門家」部隊ではない。怪獣観測のプロであり、観測結果や形状・行動・過去の文献による類似(もしくは同一)怪獣の出現記録等から、進路、被害地域を割り出し、対応策を立案する部隊である。実際の戦闘や避難誘導は自衛隊や地元警察に委ねられる。これは台風の進路や被害予想は気象庁の仕事だが、実際に洪水阻止のために土嚢を積んだり避難誘導したり、被災者への対応を行うのは地元警察・消防や自衛隊の仕事であることと相似している。ただ、怪獣災害は台風等とは比べ物にならないほどイレギュラが発生するので、戦闘にもオブザーバーとして赴くのが常である。
 ようは、『ウルトラQ』と『ウルトラマン』の間ぐらいにあたり、ウルトラマンは居ないが、科学特捜隊のような怪獣専門部署がいる感じかなと思って前作『MM9』を読んでみたのだが、気特対は非戦闘部隊なので、察知・観測・防衛策立案までは科学特捜隊だが、戦闘フェーズに於いては『宇宙猿人ゴリ』の公害Gメンに似た立場という感じだ。
 ちなみにMM、モンスター・マグニチュードとは、怪獣の容積からおおよその災害規模を割り出す目安で、体積を1立方メートル=1トンとして水に換算した場合の重量を元に、0~9までの10段階に設定されている。体積が2.512倍になるごとに、MMは1上がることになる。これは、怪獣の体躯の大きさと、その被害の大きさ(都市破壊の被害等)の規模に概ね相関関係があることに由来する。この簡易スケールによるとMM1はアフリカ象クラス6.3トンまで、MM2でティラノサウルスクラス16トンという具合に増え続け、MM7で約1600トン(典型的な爬虫類型で身長37メートルクラス)、MM8で約4000トン、(同じく爬虫類型で50メートル、巨人型であれば最大68メートル)とされている。
 そうして、クトウリュウ出現まで人類が遭遇していなかった最大規模MM9は、最大体重1万トン、最大身長爬虫類型で68メートル、巨人型で92メートルの巨大なモンスターとされている。
 ちなみに、この世界では、何千トンの重さを持ち数十メートルにも達する巨躯を怪獣が保っていられるのは、「怪獣達は、我々のビッグバン理論に基づく世界から発生しておらず、神話世界から来たの存在なのではないか。だから生きて怪獣である間は我々の物理法則には合わない巨体や光線・熱・雷撃などを操れ、死んでただの肉と化した後にそのメカニズムを探ろうとしても、分析不能なのではないか」という多重人間原理という説を元に、神話法則と物理法則の2つまったく違う原理で構築された世界の対立が、怪獣と人類との戦いなのだと解釈されている。そして、MM1を下回るサイズのものを「妖怪」とよんで分類している。妖怪には、単なる小さな回収と言った程度のものから、人間と会話し、人間に化けて社会に混じっているような知性の高いものまで、さまざまなものが存在している。
 この世界に置ける宇宙人とは何か、その侵略作戦とは。人類に対抗策はあるのか。
 驚天動地の侵略戦争が始まる。

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