2012/04/14

銀河の歴史がまた一幕だぞ

 本日、2012年4月14日(土)から22日(日)まで、舞台『銀河英雄伝説 第二章 自由惑星同盟篇』の東京公演が開催される。(大阪公演は4月28(土)・29(日)の二日。)
 その前日の2012年4月13日(金)、公演初日の前日、東京国際フォーラム ホールCにおいて、公開舞台稽古(ゲネプロ)が行われた。

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 今回は、ゲネプロの前に、ロビーでのフォトセッションと囲み取材の時間が設けられていて、そちらにも参加させて頂くことが出来た。 フォトセッションおよび囲み取材に応じて頂いたのは、河村隆一さん(ヤン・ウェンリー)・馬渕英俚可さん(ジェシカ・エドワーズ)・野久保直樹さん(ジャン・ロベール・ラップ)・大澄賢也さん(ムライ)・雨宮良さん(アレックス・キャゼルヌ)・中川晃教さん(オリビエ・ポプラン)・松井誠さん(ワルター・フォン・シェーンコップ)・西岡徳馬さん(シドニー・シトレ)の8人。
 あまり芝居やドラマ、歌謡界に明るくない神北でも名前を知っている人が多いのに、ちょっと驚いた。というか、尾張大納言徳川宗睦(『殿さま風来坊隠れ旅』)の西岡徳馬さんだよ! ちょいと奥さん!!

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 囲み取材の様子は、多分、土日の情報番組(もしくは月曜朝のモーニングショー)に出ることと思うが、やはり、LUNA SEAのボーカルRYUICHIこと河村隆一さんが主人公ヤン・ウェンリーということで、とんでもない数のマスコミが集まった。河村さんは、以前からの銀英伝のファンだそうで、そうとう前に河村さん自らが是非とも演りたいと名乗り出たのだと言う。もうヤンをどうしても演じたかった人だけあって、先日、原作者の田中芳樹さんと対談したときも、その知識と深い読み込みに田中さんが舌をまくほどのファンぶりだったと言う。

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2012/04/13

『東日本大震災と自衛隊』だぞ

 久々に、自衛隊物を手伝わせて頂いた。
 東日本大震災で、陸海空自衛隊が被災地にいかにして入り、いかに働き、被災者の皆さんを助けて来たかを400通に及ぶ隊員へのアンケートと、著者の長年の自衛隊に対する調査研究を元に纏めた本だ。この中で神北は、大雑把なものだが「どの部隊がどの地区に入ったのか」を自衛隊資料から起こした2葉の地図を寄稿させて頂いた。

 『東日本大震災と自衛隊 自衛隊は、なぜ頑張れたか?』荒木肇(¥1700+税 並木書房)

 日本の社会に根付いた日本の組織である自衛隊が、日本人の資質に基づいた組織作りをし、日本人の心情に根ざした団結力を持ち、日本に降り掛かった大きな自然災害に際して、いかに動いたのか。それを、様々な地域・部署で派垂らした自衛隊員からのアンケートと記録写真から浮き彫りにした一冊。
 神北の地図は、64ページ128枚からなる口絵写真の後、本文直前の6〜7ベージに掲載されている。
 もう、描ける限界に挑戦したような非常に細かい地図なので、ルーペ片手に一度ご覧頂きたい。人員10万6250人、航空機495機、艦艇53隻からなる自衛隊の災害派遣出動の一端なりとも、理解して頂く糸口となれば幸いである。

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2011/10/03

ヒーロー中のヒーローだぞ

「あの中には、まだ彼の一部が、彼のエッセンスが、囚われているんだ。連中が彼から作り出したあの男の中に、バッキー・バーンズの人間性の欠片が残ってるんだよ」スティーブ・グラント・ロジャース(キャプテン・アメリカ)

『キャプテン・アメリカ:ウィンター・ソルジャー』エド・プルベイカー/スティーブ・エプティング 翻訳:堺三保(小学館集英社プロダクション 2600円+税)

 畏友堺三保くんより、献本を頂戴した。休眠を挿みながら70年近く続くアメリカン・コミックの中核的ヒーロー『キャプテン・アメリカ』の最新翻訳版だ。献本に感謝しつつ、むさぼるように読ませて頂いた。

 第二次大戦中からのキャプテン・アメリカの宿敵であり、元ナチスのエージェントだった、レッド・スカルがニューヨークで射殺された。彼は既に自らの肉体を捨て、キャプテン・アメリカことスティープ・ロジャースの細胞から作ったクローン体に自らの意思を転写して生き延びていたのだが、兇弾はその不可侵の肉体を易々と貫き、レッド・スカルの息の根を止めていた。
 S.H.I.E.L.D.の司令官ニック・フューリーは、それをソ連時代から噂されていた絶対証拠を残さない幻の暗殺者「ウィンター・ソルジャー」の仕業と断定。しかも、複数の目撃情報・古い捜査資料の中に眠っていた監視カメラ情報まで、S.H.I.E.L.D.の持つ膨大な資料を徹底的に再検索した結果、「ウィンター・ソルジャー」は、第二次大戦末に死に別れた筈のキャプテン・アメリカの相棒、バッキーことジェームス・ブキャナン・バーンズである疑いが濃厚になって来た。
 

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2011/08/05

今度は侵略戦争だぞ!

(はい、地球は狙われています。私は彼らチルゾギーニャ遊星人の侵略を阻止するために地球に来たんです)ジェミー

『MM9―invasion― 』山本 弘( 東京創元社1700円+税)

 前巻ラストの、巨大少女怪獣ヒメと、神話伝承から推定される以外では初めて観測されたMM9規模の巨大怪獣クトウリュウとの戦いから5年の歳月が流れていた。ヒメは人間サイズに戻った後、以前同様筑波の気象研で暮らし始めた。
 しかし既にヒメは20メートル級まで巨大化することが判明している。この身長20メートルの巨人型といえば、想定体重100トンを越え、MM5クラスである。法規では、普通に歩き回るだけで都市に被害を与え得るこのクラス以上の怪獣は、発見次第即刻排除することになっている。しかし、ヒメは会話こそ出来ないが、人間の幼児程度の知能を持ち、かつ人に懐いており、さらにクトウリュウ撃退の立役者でもある。世論、専門家の意見、国会の論調、すべてが二分されたまま平行線を辿ったが、戦いから3ヶ月ほど後にヒメは全身を分泌年液で覆い、ミイラのような姿で仮死冬眠クリプトビオシスに入ってしまった。そして次にクトウリュウ級の神話怪獣が人類に害を及ぼす何百年か先まで眠り続けるのではないかと推測されたまま、現在に至る。「今のところ害は無い」という判断が大勢を占め、ニスを塗った木彫か蝉の抜け殻のようになって固まったまま、ヒメは気象研に保護されていた。このヒメの観察・研究のためもあり、案野悠里(あんのゆり)は気特対から気象研に移動していた。
 しかし、いかに研究が行き詰まっているとしても、かつてヒメを攫ったCCIのようなカルト・テロ集団がヒメを狙うことは今後も考えられる。ヒメは、より安全で、万が一突然目覚めても周囲に被害を及ぼす心配の少ない、北海道の自衛隊基地へ遷されることになった。
 しかし、そのヒメを載せたヘリが気象研から大型機に積み替える中継基地の百里に向かう途中、霞ヶ浦上空で隕石と衝突して消息を絶った。しかも、目撃者によるとそれは宇宙から落下して来た隕石とは思えぬ低速でヘリと衝突している。
 気象庁特異生物対策部部長、久里浜 祥一の脳裏を「宇宙怪獣」という不吉な語がよぎった

 待望のMM9(エムエムナイン)第2部が、東京創元社から登場。今度は宇宙からの侵略である。

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2011/07/27

『時空改変空母 越後』だぞ

「……内閣総理大臣、田中角栄閣下。我らが帝国海軍第一機動艦隊は、ただ今を持ちまして閣下の指揮をお受けいたします。どうぞ、何なりとご命令下さい」帝国海軍第一機動艦隊 小沢治三郎中将

『時空改変空母 越後 大和の帰還』佐原晃(学研 歴史群像新書 933円+税)

 1974年6月10日、オイルショックや公害問題に揺れていた日本に地震が起こった。しかし、それは我々の知る地震とは大きく異なり、日本全国が一斉に揺れ、その後、湧き出した叢雲が外の世界との連絡を妨げてしまった。
 そして、6月22日、海上自衛隊の護衛艦〈はるな〉は、「あ号作戦」(マリアナ沖海戦 1944年)からの帰途にある連合艦隊と接触した。
 30年の時間を越えて、太平洋戦争まっただ中の西太平洋の日米両軍と、1974年日本が出会った。時の宰相田中角栄は本国と連絡が付かなくなっている国内の米軍基地を急襲・懐柔し、強制接収した兵器を次々と日本の勢力に組み込んだ。かくして、米軍空母ミッドウェイは、越後と名付けられた。

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『帝国亜細亜大戦』だぞ

「タイは失われた領土を回復したい。我々はその領土を通る援蒋ルートを切断したい。つまり利害は一致しているわけだ」参謀本部第八課謀略班班長 門松正一中佐

『帝国亜細亜大戦 紛争勃発!』高貫布士・高嶋規之(経済界リュウノベルズ 933円+税)

 1940年夏。バリでヒトラーが暗殺された世界が舞台。日独の軍事同盟は成立せず、日本は英国との同盟を維持したものの、ドイツを介しヴィシー政権と交渉して仏領インドシナに軍隊を派遣し、中国国民党軍の命脈「援蒋ルート」を絶つ作戦は頓挫してしまう。このまま泥沼のような中国戦線に戦力を取られて行くわけにはいかない軍部は、亜細亜でまったく新しい作戦を展開する。しかしそれは、日本軍を直接動かすものでもなければ、日本の戦争でもなかった。

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2011/02/19

書評『コップクラフト』だぞ

「ファルバーニ王国とユナイテッド・ネーション国の協約に基づき、ミルヴォア騎士および準騎士はドリーニ世界での正義の執行を保証されている。いと高きフィエルを保護するため。貴君らには私の探索を手伝っていただきたい。ファルバーニ王の名のもとにこれを要求する」ティラナ・バルシュ・ミルヴォイ・ラータ=イムセダーリャ・イェ・テベレーナ・デヴォル=ネラーノ・セーヤ・ネル・エクセディリカ

『コップクラフト DRAGNET MIRAGE RELOADED』賀東招二(小学館 ガガガ文庫2009年11月23日発行 600円+税)
『コップクラフト2 DRAGNET MIRAGE RELOADED』賀東招二(小学館 ガガガ文庫2010年06月23日発行 590円+税)
『コップクラフト3 DRAGNET MIRAGE RELOADED』賀東招二(小学館 ガガガ文庫2011年01月23日発行 571円+税)

 15年前、太平洋上に突然現れた超空間ゲートによって地球は、別の世界と繋がった。『レト・セマーニ』。中世期のような封建社会を持ち、魔術が存在し、人間の他に妖精などが棲む、天動説的な平らな世界。そう惑星ですらなかった。空を巡る陽や月や星はあるが、我々が知る衛星や恒星ではない別の物らしい。セマーニは人類の科学や論理が全く通用しない世界だったのだ。
 ゲートから僅か60マイル程の太平洋上に突然誕生したカリアエナ島は、かつてはセマーニ世界のファルバーニ王国南部のカリアエナ半島だった物が、ゲートを超えた地滑りをし、地球側へ出てきた物だ。
 この島に作られたサンテレサ市は、両世界からの移民200万人で成り立つ国境都市である。
 しかし両世界が繋がることによって、セマーニからは魔術の産物を、「レト・ドリーニ(蛮人の地)」と彼らが呼ぶ地球からは化学薬品やハイテク機械を、こっそり運んで儲けようと言う密輸業者が後を絶たない。
 さらにタチの悪い国連安保理によるセマーニ国家間の争いに対するPKF派兵により、ゲートを超えて逃げ出してきたセマーニ人難民(あまりの異質さに「宇宙人」という侮蔑のスラングが生まれた)が発生した。

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書評 『うちのメイドは不定形』だぞ

「あなたにお会いするために、あなたのためだけに永久凍土の下からはせ参じました! どうか末永くおそばに置いてください!」テケリ・リ・テケ・テケ・リ・ル・テケリ・テケ・リ・ラ・ル・ラ・テケリ・テケ・テケリ・リ・ル・ラ・リ・テケリ・リ

『うちのメイドは不定形』静川龍宗 原案:森瀬繚(PHP研究所 スマッシュ文庫2010年06月23日発行 514円+税)

 新井沢トオルのもとに、南極に調査に行っている父から突然送られて来た荷物には「荷物の中身をお湯につけて三分間待つこと」と書かれていた。その通りにすると、お湯の中からエメラルド・グリーンの瞳、緑色の髪の美少女メイドさんが現れた。
 テケリさんは、生まれながらの奉仕種族で、家事手伝いの天才。分身したり手を増やしたり、必要に応じて姿を変えて、おそるべき家事能力を発揮する。とりあえずテケリさんと共に暮らすことになったトオルだったが、それを敏感に感じ取ったものがいた。
 同じクラスの帰国子女あさひ・ビーバディ。彼女はトオルの家のメイドさんが人外のものであることに気付き、密かに行動を開始する。

 大変だった。6月に刊行されたものだが、PHPのスマッシュ文庫を置いている店になかなか行き当たらず、手に入ったのはヨドバシ秋葉原の有隣堂で行われていた「逢空万太の本棚」という企画のおかげである。
 クロノスケープの森瀬繚さんが原案を練り、静川龍宗(しずかわたっそう)さんが書いた、なんというか、ヨモスエな邪神系ラブコメである。今回登場した女の子は二人。タイトルにもなっている1億5千5百万年の眠りから覚めた不定型奉仕種族ショゴスのメイド、テケリさん。そして、ハーフの帰国子女で、大達人位階(アデプタス・メジャー・クラス)の魔術師(マギ)にして魔女(ウィッチ)、大導師に背き、結社(オーダー)と戦い、追われる身となった叛逆者(トリーズナー)、あさひ・ピーバディ。
 トロロン(ダブル・ミーニング)としたのメイド、テケリさん。思い込んだら命がけの直情径行金髪魔導士の二人に、トオルの日常はどんどん浸食されて行く。
 ちなみに、朝日の髪型はツインテール。テケリさんの髪は、不定型で必要に応じて手になったり自由に動く「ウィアードテール(ズ)」(黒書刊行会 みづせゆう氏の命名)であることを付記しておく。

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書評 『這いよれ!ニャル子さん6』だぞ

「……分かんないんだよ、自分でも。お前が好きかどうかなんて。まだ会って二週間くらいしか経ってないし。でも嫌いじゃ、ない、と思う。何だかんだで、僕を守ってくれてるし」八坂真尋

『這いよれ!ニャル子さん6』逢空万太(ソフトバンククリエイティブ GA文庫2010年12月31日発行 600円+税)

 ニャル子さんもついに6巻目。驚くべきことに今回、騒ぎの張本人に、今まで出て来なかった邪神やら何やらの新種族キャラが登場しない。そのかわり、クー子の従姉のクー音が八坂家にやって来る。クー音はさすがクー子の従姉だけあって、強烈なストーカー体質、加えて『紅蓮朱雀』『鳳凰天昇』『紺碧の猛禽』『惑星保護機構の赤い悪魔』『ヒートの女』『朱より紅し(シンクレッダー)』などと様々な二つ名で呼ばれ、『クー音がいないいところに煙は立たない』と言われた宇宙で最もクトグァな人。『僕らの火の七日間戦争』というタイトルで武勇伝が映画化されたこともあると言う。このクー音が来襲。ここに至りクー子は、「——わたしは、少年と婚約したから」と宣言。ここに、八坂家(未登場の父を除く)総員および居着いた邪神たち総出の偽装工作が始まる。

 ニャル子さんもついに6巻目。相も変わらず平和な日々を過ごす、八坂家に居着いた邪神(宇宙人)達。今回はついに4次元空間に一つずつ個室を貰い、ますます長期戦の構え。とはいえ、最初にニャル子がやって来てからまだ僅か半月かそこらというから、あれだけ色々な事件が起こりつつも、各巻3日ずつしか日を掛けてない換算かよ!それだけの間に八坂ニャル子、クー子、ハス太が次々と転校して来たんだから、そりゃクラスメート達から不審がられる筈だ。
 という訳で、わりとツナギ的中弛みの回ではあるのだが、別に前の5作が弛んでないという訳でもないしこのユルユル感こそがニャル子さんの面目躍如なので、それで構わない。逆に、抗し難い敵がある訳ではなくクー音のためにユルユルな日常がかき乱される程度で済んでいる中で、真尋から冒頭のセリフが出るなど、ミョーなフラグが立ったり折れたりするユルユルな中にも出会って2週間の進展が見られてなかなか楽しい。
 2009年04月に1巻目が出てから、1年8ヶ月で6巻目。平均して4ヶ月に1冊ペースを維持。快調に続いているシリーズだ。次巻も楽しみである。

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書評『博物戦艦アンヴェイル2 ケーマの白骨宮殿』だぞ

「おれはウルサールの道化だもの。なんでもしていい代わりに、何も持てないことになっている。お金も、家も、名誉もね」金鈴道化師ジェイミー・ティンクティキ

『博物戦艦アンヴェイル2 ケーマの白骨宮殿』小川一水(朝日新聞出版 朝日ノベルズ2010年11月30日発行 1000円+税)

 ラングラフ王ウルサールの命により、太古の博覧王メギオスの伝説を追って1万アクリートの彼方まで航海し、誰も知らなかった未知の土地を踏査し、伝説に語られたメギオス驚異「金毛氈」を王港レステルシーへと持ち帰った戦艦アンヴェイル。しかし、宿敵オノキア王国の軍艦ドレシェンガーとの相次ぐ戦闘の結果、ぼろぼろになったこの船は、帰還祝賀の祭にすら出せぬ酷い状態になっていた。
 冒険を成し遂げた艦長アルセーノ・ヘラルディーノ(アル)と、少女騎士ティセル・グンドラフ(テス)そしてジェイミー(ジャム)に国王ウルサールから次に与えられた命は、この艦の再建と、新たなるメギオス驚異を探し求める探検の旅だった。
 しかし、その再建は一筋縄ではいかず……。

 「博物戦艦アンヴェイル」シリーズの2巻目。実は、前作は「どうしても夏休み帰還に読みたくて」昨年8月まで待って読んだ。とても気持ちの良い、少年少女が周りと力を合わせて艱難辛苦を乗り越える冒険譚だった。
 しかし、続く2巻目はすぐには冒険の話へとは続かなかった。まずはお妃さまの命でテスとジャムが異国アンドゥーダナーの図書船テンユウ号におつかいに行き、続いてアルがヘラルディーノ家のドッグで艦を再建する。もちろんそれはそれぞれ一筋縄では行かず、彼らは安全な故郷の港町レステルシーの中で、それぞれ命がけの冒険をさせられる。
 この冒険を通じて、少しずつ小出しにされるこの世界の有り様がなかなか面白い。著者の頭の中には、もっと様々なこの世界では当たり前の生物や文化、そしてこの世界の人々にとっても常識の外にあるようなメギオス驚異が、まだまだ潤沢に詰まっているのだろう。じわじわと楽しんで行きたいシリーズだ。

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